掲載画像《スラヴ叙事詩「ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世 ー スラヴ王朝の統一」》
アルフォンス・ミュシャ
第48回定期演奏会では「第1部・世界の川」と題して6つの川の情景を歌います。「モルダウ」はその中の1曲です。
Mucha展
国立新美術館で開催されているミュシャ展の会期は6月4日までなのでもっと早く載せればよかったのですが申し訳ありません。 檀れいさんの澄み切った美しい音声ガイドに従って「ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世 ー スラヴ王朝の統一」(1924年、たて 405×よこ 480cm)の前にくると「モルダウ」が流れてきました。解説は「軍勢の強さから『鉄人王』と呼ばれたオタカル2世が彼の姪とハンガリー王の息子の結婚式で来賓に対して、新郎と新婦の手を取って引き合わせている姿が描かれている」です。
1860年モラヴィア(現在のチェコ共和国)で生まれたミュシャは、昔は統一民族であったという「汎スラヴ主義」をもとにスラヴ民族の想像上の歴史を、スメタナの組曲「わが祖国」から構想を抱き、17年の歳月をかけて「スラヴ叙事詩」を描き上げました。20の絵画から成る「スラヴ叙事詩」は大きいものは縦6メートル、横8メートルもある巨大な絵画です。100年前に描かれた巨大絵画は現在に至っても絵具ははがれず、ひび割れもしていません。もちろん色も褪せていません。
我々がスラヴというと、鉄筋コンクリート構造における床板のことであり、また山の用語として一枚岩のことを言っていますが、ここに言うスラヴとはスラヴ民族のことで、ロシア・ウクライナ・白ロシア・ポーランド・チェコ・スロバキア・セルビア・クロアチア・ブルガリアを指しています。それらから連想されるのは「広大」であり、「大陸」であり、「滔々と流れる歴史」です。モルダウを聞きながら巨大絵画の前に立つと人間の小ささ、取るに足らないことでくよくよすることがつくづく馬鹿らしく思えてきます。私「スラヴ叙事詩」を見てからというものの「モルダウ」を歌うとき、そう鞍馬天狗の映画を見ると風呂敷を頭に巻いてチャンバラをした少年時代に戻ったような気分になってしまいます。もっともこの少年時代の私は横浜にもあった自然の中で遊ぶ穢れなき純粋無垢な私です。
因みに同時代にセザンヌ、ゴッホ、モネ、日本の画家では青木繁、佐伯祐三がいます。(朝倉)
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